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イタリア町めぐり

城砦に守られた海岸 地図


 サルデーニャ島の北西端、アルゲーロという町に興味をもったのは、本屋で「カタルーニャ語入門」という本を手にとったときのことである。
 カタルーニャ語とは、スペイン東部のバルセロナを中心としたカタルーニャ地方で話されることば。独立志向の強いバルセロナでは、反中央(マドリード)の象徴の1つとされている。
 とはいえ、標準スペイン語(カスティーリャ語)と同じくラテン系の言語であり、我々東洋人にとってみれば似たようなものである。
 実際にバルセロナで見聞きしたことがあるが、せいぜい、東京弁と大阪弁の違いくらいかという印象であった。少なくとも、津軽弁と薩摩弁ほどの差はないと思う。
  撮影はすべて1990年9月

旧市街の案内標識には、カタルーニャ語とイタリア語が併記されていた。
そもそも、最上段の「観光標識」という文字自体がカタルーニャ語のようだ。

海岸沿いのカルメン教会(イタリア語ではカリメロ教会)にて。


(画面にポインタを合わせると、案内標識を拡大します)
海岸沿いのカルメン教会

 前置きが長くなったが、「カタルーニャ語入門」のページを繰り、その話されている地域が地図で示されているページを開いて驚いた。
 バルセロナを中心とするカタルーニャ地方と、その近辺の島が濃く塗られているのは当然として、問題はあとの1か所。それが、サルデーニャ島のアルゲーロ市だったのである。
 島の広い地域で話されているというのではない。イベリア半島からはるか東にあるサルデーニャ島で、北西端のアルゲーロ市だけがカタルーニャ語圏として示されていたのである。

--そんな変な町ならば、絶対に見なけりゃならないぞ!
 こうして、1990年7月。宿泊地のサッサリから私鉄のサルデーニャ鉄道(FdS)に乗り、昼下がりのアルゲーロ駅に降り立ったのである。
 町外れにある駅から徒歩で約20分。旧市街は500メートル四方にも満たない狭い地域であった。
旧市街の路地

▲旧市街は狭いから、どこを歩いていてもすぐに海に出る。
防潮堤のように見える城砦(稜保)の向こうに、海が光っている。
▼旧市街の路地から見える聖ミケーレ教会。アルゲーロでも最古に属する教会で、16世紀に完成。17世紀後半にバロック風に改築された。ドームが美しい。

聖ミケーレ教会

 アルゲーロの町は、12世紀にジェノヴァ人が建設。14世紀になって、アラゴン・カタルーニャ連合によって占領されて以来、カタルーニャ各地からの入植者で人口が増え、カタルーニャ語やカタルーニャ風の建築が今に残るようになったという。
 こうしてアルゲーロは、ただでさえ特異なサルデーニャ島で、非常に特異な町となったのである。

 町を一回りすると、施設の看板がカタルーニャ語とイタリア語で併記されていることに気づいた。しかも、塔には赤と黄色のカタルーニャの旗がはためいているではないか(トップの写真の右端)。

 こうなると、あとは生きたカタルーニャ語を聞くだけである。
 しかし、到着したのが昼下がりだったため、店も閉まっており、人通りもあまりない。
 やむなく、新市街側に向かい、たまたま開いていたスーパーに突入することにした。あまりの暑さのため、早く涼みたかったのも理由の一つである。
旧市街の中心部。海に囲まれた場所のせいか、裏通りといっても、なんとなく明るく開放的な雰囲気。 旧市街の路地


 そして、レジのおばさんと地元の主婦が会話している姿を発見。すみやかに接近し、全神経を耳に集中した。
 ところがである。耳に入ってきたことばは、ローマで聞いたよりもはるかにきれいなイタリア標準語であった。
 その後も何度か会話を盗み聞きするチャンスはあったのだが、結果は同じ。とうとう生きたカタルーニャ語は聞くことができなかった。
--もう、そんなことばを話している人なんかいないのかな。
 勝手にそう思い込んで、結局夕食も食べずに、さっさとサッサリに戻ってしまったのであった。

 思えば、もっとゆっくりとして、地元の食堂で海の幸でも食べてくればよかった。だが、その日はあまりにも暑くて、冷静な判断が下せない状況であった。
 ものの本によれば、やはりいまでも古代カタルーニャ語が話されているという。もし、またアルゲーロに行く機会があれば、今度こそ地元のバールや食堂に居すわって、カタルーニャ語を耳にしたいと思っている。

●所在地
サルデーニャ州サッサリ県
●公共交通
・サッサリから鉄道またはバスで約40分。どちらも1~2時間に1本。
・中心部から北6キロに空港がある。市内までバス・タクシーで約10分。
●見どころ
・カタルーニャ文化の香り残る、城砦に囲まれた小さな旧市街。
・海水浴やマリンスポーツが盛んな美しい海。
●老婆心ながら
旧市街へは列車よりもバスが便利。バスターミナルは旧市街近くにある。サルデーニャ鉄道は、かつては旧市街近くまで延びていたようだが、現在はかなり離れた場所が終着駅となっている。
海岸から新市街を望む
旧市街の城砦から、南方に広がる新市街を望む。
2005年6月作成


 


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