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| ヌーオロ(ヌオロ)は、地中海第二の島、サルデーニャ(島の方言では「サルディーニャ」)島の内陸に位置する大きな町だ。サルデーニャ島というと、コスタ・ズメラルダ(エメラルド海岸)に代表されるように、海岸のリゾート地という印象が強いかもしれないが、本当のサルデーニャ島の姿は内陸にある……のだそうだ。 サルデーニャ島には、古代からさまざまな民族が海から侵入してきたため、大昔から住んでいる人びとは海の近くには住まず、海にかかわる仕事もしないという。 そんな話を聞き、サルデーニャ独自の歴史や民俗に少しでも触れてみたいという好奇心にかられ、州都カッリャリ(カリアリ)から列車を乗り継ぎ、内陸地帯の中心都市であるヌーオロに向かったのは、1990年の秋のことであった。 だが、国鉄(FS)の列車はあたりまえのように数十分も遅れ、マコメールという駅で乗り換えられるはずだった私鉄サルデーニャ鉄道(FdS)の列車は、とうに出発したあとだった。やむなく、1軒しかない駅前の食堂に入り、2時間後に発車する次の列車をぼんやりと待つことにしたのであった。 |
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撮影: 1990年9月 |
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ヌーオロに向かう私鉄の車内。車窓には乾いた大地が延々と続き、ときたま町が現れると駅になる。 |
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| 乾燥しきった沿線の風景にあきたころ、私鉄のディーゼルカーは、ようやくヌーオロに到着した。 駅近くに宿をとり、まずは翌日のカッリャリ行きのバスの時刻を調べようと、バスターミナルのあるイタリア広場に出かけたときのこと。広場に面したバールに目を向けると、一人の若者(当時は私も若者だったが)と目が合った。 彼は私を手招きする。見たところ、昼間からかなり酔っぱらっているようだ。5メートルほど距離をたもったまま、丁重にお断りをしたが、「いいから、何か飲め。おごるから」という。悪いやつじゃなさそうだったし、バールも開放的でいつでも逃げられそうだった。 「じゃあ、せっかくだから、何かごちそうになるかあ」と、私は店の入口近くに立ち、バールのマスターに生ビールを一杯注文した。 |
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茫漠とした風景にいい加減あきたころ、車窓に突如ヌーオロの町が見えてくる。向こうにある山は、町の展望台から間近に見ることができる。 |
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店の中を見わたすと、奥は意外に広くなっており、ビリヤードの周囲には酒を片手に持った若者たちがたむろしている。 もっとも、彼らはおかしな東洋人が店に入ってきたことに、なんの関心も抱いていないようだった。 そばの男は「どこから来た、日本か、そうか、もっと飲め」としつこい。かといって、話がはずむわけでもない。長居は無用だと思ったが、おごってもらったままでも悪いので、今度はこちらが一杯おごるよというのだが、けっしてそれを受けようとはしない。自分がおごるからもっと飲めという。 博物館を見たかったので、さすがにもう一杯飲むのは遠慮して、バールを辞すことにした。彼は残念がっていたが、ただそれだけだった。 外に目を向けると、道の向こう側で、買い物カゴをもった太めのおばさんが、こちらほうをじっとにらんでいるのに気づいた。私がバールの外に出たのを見届けると、彼女は安心したように歩きだしたのであった。 本土でさえ失業者が多かった当時のイタリアである。サルデーニャの田舎町にはほとんど仕事がなかったという。そんななかで、酔っぱらいの失業者の若者に、タダ酒をごちそうになった私なのであった。 |
| 丘の上にあるヌーオロは、市内にも坂道が多い。意外にも、街並みはごく普通のイタリアの町と変わりなかった。 |
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家の壁にこんな落書き(?)が。イタリア政府に対する反感が表現されているのか……と思ったのだがよくわからない。 1990.09 写真にポインタを合わせると、中央部を拡大します。 |
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この島の伝統的な文化や民俗は、「サルデーニャの生活と民衆の伝統博物館」で知ることができる。体を真っ黒に塗りたくり、仮面をかぶって歩く祭りは、キリスト教以前の文化が根強く残っていることを思わせる。 その等身大の人形は、かなり気味悪かったけれども、強いインパクトがあり、数分間そこを動くことができなかった。 それにしても、博物館の受付がカラビニエーリ(憲兵)だったのにはびっくり。反政府、反中央の意識が強い土地柄だからだろうか、それとも失業者が多かったための社会不安が原因か、公的な場所の警備は見るからに厳しかった。町自体に危険な印象はなかったものの、どことなく不穏な雰囲気であったことは否めない。1990年秋のことである。 現在は、町の雰囲気もずいぶん変わっていることだろう。次回は、もっと山の中にある小さな町や村を訪ねて、生きたサルデーニャの文化にひたりたい。 |
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●所在地 サルデーニャ州ヌーオロ県(県庁所在地) ●公共交通 ・州都カッリャリ(カリアリ)から、高速バスで約2時間半。ノンストップバスや急行バスなどが日に数本あり。サッサリからのバスの便も数本。 ・鉄道ではカッリャリから国鉄(FS)でマコメールまで約1時間半~2時間。ヌーオロ行きの私鉄(FdS)に乗り換えて約1時間半(日に数本、パス便もあり)。 ●見どころ ・サルデーニャのことならなんでもわかる「サルデーニャの生活と民衆の伝統博物館」は町はずれにある。 ・展望台からの眺めは絶品。 ●老婆心ながら サルデーニャ語はイタリア語やスペイン語、フランス語と同じロマンス諸語の一つで、語尾変化や発音などに祖語であるラテン語の特徴を色濃く残している。 |
町の中心部の風景。どのような不思議な町かと期待していたのだが、表面上はなんの変哲もないイタリアの町で、ちょっぴり拍子抜けしてしまった。
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