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いつものように、学校が終わってフィレンツェの町中をS氏と歩いていたときであった。 私が、ある店のショーウィンドウをのぞきこんでいる間に、S氏の姿が見えなくなった。 どこに行ったのかと見まわすと、はす向かいの小さな文房具屋に入って、いつのまにか年配の店主らしきおじさんと話し込んでいるではないか。おじさんの隣には、10歳くらいだろうか、かわいい女の子がいる。
なにをやってるんだろうと思って、私も店に入っていった。
----Sさんはこんなもんを買うのかなぁ……。ブランド物の輸入の仕事をしていると言ってたけど、こりゃあとんでもないセンスだぞ。
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こんな感じのおじさんだった……ような気がする。 写真は、ローマの北にあるオルヴィエートにて。 撮影 : 1981/11 Orvieto |
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まあ、店主もヒマなのか話好きなのか、初級者の会話にていねいに付き合ってくれているのがうれしい。おかげで、学校で学んだことをずいぶん実践で使うことができた。
私だかS氏だかが、「Anch'io」(アンキーオ……「自分もそうだ」という意味)と言ったときなど、「おーっ、なかなか実用的なイタリア語を知っているじゃないか」などとほめてくれたのが印象的であった。
20分近く話したろうか、話に区切りがついた。そこで、ようやくS氏が「これは、いくら?」と黄色い定規を指さしたときである。
----ああ、そうだったのか。950リラを「ノーベ・チンクワンタ(9と50)」と省略するのは知っていたけど、もっと俗っぽく「ノーベ・エ・メッゾ」という言い方もあるんだな。よしよし、こんどどこかで使ってみよう……。
だが……。 |
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イタリア人の子どもは、みんな目がくりくりしてかわいかった。この国は、子どもと老人の愛想がいい。 イタリア中部、アッシージにて。 撮影 : 1990/09 Assisi |
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まあ、それはともかく、S氏はこうして悪趣味な黄色い定規を手にして店を出た。
ああ、またしても……である。
ま、そんなことはどうでもいい。それよりも、あのかわいい女の子は、いまごろ20代なかばの一人前のイタリア女になっていることだろう。どんな女性になっているのだろうか。
余談だが、一般的にいって、イタリアの若い女性がツンケンしているのは事実である。長年その理由もナゾであったが、こちらのナゾは大学の同級生のとある女性によって解明された。 | |
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