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週末の小旅行には、たまにはバスも使ったが、たいていは鉄道であった。 週末にかぎらず、午前中の授業が終わって、用もないのに列車に乗って出かけたこともあった。要するに、放浪癖があるのだ。 「ダガシ君、せっかくイタリアに来たんだから、もっといい服でも買ったらどうなんだい」 安下宿の同部屋に巣くうS氏は、ファッション関係の仕事をしていたこともあって、こう言うのだが、私は金のつづくかぎり旅費と交通費にあてようと思い、ボロをまとってあちこちに出かけていたのである。
列車に乗ると、ひたすら窓の外を眺める。これは、どこに行っても同じ。いくら見ても飽きないのである。
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| これが、現在のイタリア国鉄(FS)の駅名票。青字に白抜きのゴシック体の文字は飾り気がないけれど、なんとなくおしゃれ。 撮影 : 1996/07 Terontola
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どこに行ったときだったかは忘れたが、私の乗った普通列車が小さな駅に着こうとしていた。私は、例によって目を皿のようにして駅の名前を探した。 そしてすぐに、イタリアの駅名票によくあるような、文字が書かれた横長の板が、ホームの天井から下がっているのを見つけたのである。 そこには、「Gabinetto」と書かれていた。 ----ガビネットかぁ、変わった名前の駅だなぁ。 時刻表を見たのだが、そんな名前の駅はない。一瞬おかしいなと思ったが、もともとものごとを深く考えない駄菓子青年である。「まあいいか」と思っただけで、ぼんやりと青い空を見つめるだけであった。
また、ある日、また普通列車に乗って出かけたときのこと。小さな駅に列車が停まった。私は、やはり目を皿にして駅名票を探した。すると、そこに書かれていた駅名は、またもや「Gabinetto」だったのである。
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1980年代なかばまでは、まだこんなクラシックな客車が走っていたのである。駅名票もシブい。 撮影 : 1985/11 Mantova |
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賢明な読者諸君にはもうお分かりのことだろう。
----なにも、あんなに立派に、しかも凝った書体で「Gabinetto」と書くこともないじゃないか。
ところで、最近はイタリアでも「TOILETTE」(トイレッテと読むらしい)と表記することが多くなったような気がするんですが、どうなんでしょう? 私としては、「ガビネット」というほうが、ガボガボゴボゴボとした語感が、いかにもそれらしく聞こえていいと思うんですが……。まさに、日本語で「ベンジョ」という感じですよね。
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